センチメンタルな夏の終わりに
このところ、外が涼しくなってきた。秋か。だいすきな夏が今年も終わる。
暑い間サボっていた散歩をひさしぶりに再開した。
ベビーカー嫌いの娘がめずらしくすんなりと乗ってくれたので、とくに用もなかったけど、たっぷり歩けるコンビニまで出かけることにした。
田んぼの中の小さな脇道へ入ると
さっきまでの車の騒音は一気に消えた。
娘はとんぼにヒラヒラと手を伸ばし
ひょろひょろと流れる小川の音に耳を澄ませ
いつかの水溜りをつつくスズメの姿をジッと見つめている。
そこへ気持ちいい風がやってきて
パーッと明るい、嬉しそうな顔をした。確かに。
帰り道、警備員のおじちゃんに機嫌よく手を挙げたかと思えば
寝ていると思った犬に突然吠えられ
真っ赤な顔をして泣き出した。
通りがかった自転車のおばちゃんが一生懸命変な顔を作って笑かそうとしてくれたけど、一向に泣き止まず、声はさらに大きくなっていく。
もう家は見えてるんだけどなぁとつぶやきながら、するっと右腕に娘を抱き上げ、空になったベビーカーを左手で押し、家路に着く。
ずいぶんとのんびり長い散歩になったな。
今日も私はなんにもできなかった。
娘が寝たらしようと思っていたことのあれこれはどれも手付かずのまま。
離乳食のストックを作なねば、あれ、トイレ掃除いつからしてないっけ、そろそろ図書館で借りている読みかけの本の期限も迫ってきたな、冷蔵庫の中も空っぽだよ。
欲張りな私は、あれもしたいこれも欲しい。もっとしたい、もっともっと欲しい。
子どものいない夫婦のことも、独身で働く人も大家族のかあちゃんも、海の近くの暮らしも、にぎやかな都会の暮らしも、どの人生も羨ましく思ってしまう。
そうか、それって、どんな人生も羨ましいものなんだなぁと、ふと気づく。
私は母になって小さな家で家族3人暮らしているよ。
コンビニで買ったかぼちゃプリンを食べながら、まんざらでもないなぁなんて、ふと思う。早く栗ごはんが食べたいな。