半人前主婦

帰りの遅い夫を待ちながら、今日も三歩進んで二歩下がる

好きだ好きだ好きだ、旅行記

こんな寒い冬は熱い愛で温まりたい!

 

港で噂の「湯を沸かすほどの熱い愛」が観たい!しかし、私の住む群馬県では上映予定がない!
そんなわけで、お隣栃木県は足利市へはるばる出かけることにしたのが旅の始まりで。
欲張ってそのまたお隣の茨城県へも足をのばしちゃおうと盛り上がり、気づけば北関東3県をぐるっとまわる小旅行になった。

なんとなく計画を立て始めるとバレンタインがわりといいタイミングなことに気づき、前日にガトーショコラを焼いた。年に一度のお菓子作り、毎年バタバタとヘタレながらもかれこれ5、6年、いやもう少し長く、健気に続けている。本命はお義父さん。
それはそれは毎年嬉しそうに受け取ってくれ、お義母さんに見つからないようテーブルの下にこっそり隠すんだ。実の父には決して見せることのないようなかわいい笑顔で、かわいい娘を演じてる自分が実に恥ずかしいが、悪くない。

そんなわけで、毎年練習台になってもらっている夫には何年も本命チョコをあげてないことになるのか。今年の誕生日にはケーキでも焼こうかな。

無事、プレゼントを届けることができてホッとしたところで、出発。

 

最近は映画デートにはまっていて、「怒り」、「ジャニス」、「君の名は。」、「この世界の片隅に」と、旬な映画を2人で観てる。共有できる話題でハイタッチしたり泣けたり揉めたり、むにゃむにゃとディスカッションするのが好きだ。夫はややこしくなってくるとお開きだと仕向けて来るのだが、なにせ私はしつこいので、あのシーンあの台詞が!とか騒ぎ続け、終いにはケンカが始まることもしばしば。
今回はわざわざ観たかった私と、ふんわりついてきた夫の温度差が予想とは逆で、それもまた面白く、ペラペラと話し続け、車はひた走り続けた。

 

やっと水戸市に入った頃。
夫が突如、「いいこと思いついた!」と言い出し、何かと思えば鹿島臨海工業地帯がたぶん近くにあるはずだと言うじゃないか。無類の工場萌えーな私は即座に連れてってと甘え、真夜中の冒険が始まった。
近いと思っていた工場地帯は、今夜の寝床にしようとしていた道の駅とは逆方向な上、まぁまぁな距離もあり、真っ黒な海沿いの道をまたも、もくもくと走り続けることになった。
満月に近いまぁるい月は、いつ海に落ちてもおかしくないほど低く、どぼんと落っこちたらどうなるのかと、眠たい頭でずっと考えていた。じゅわっと言うのだろうか。それは太陽か。

そろそろかなぁと倒していたシートを起こした矢先に、どーんとこれでもかと現れた工場夜景に思わず息を呑んだ。

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これこれこれ、このゾワゾワする感じは何なのか。いまだにわからないけど、このどこからともなくやってくるゾワゾワ感にいつも胸がぎゅーっとなる。

ノスタルジックなその風景は大好きな映画「スワロウテイル」の世界。My wayが流れてる。
何かいろいろ思い出してるような気がするのに、いつも何にも出てはこないんだな。ゴクリとまた何かを飲み込んだ。

静かに興奮し過ぎて、疲れたかな。
心配していた寒さを感じる間も無く、車の荷台で寝袋に包まって2人眠った。相変わらず、車中泊が好きだ。

 

翌朝、水戸芸術館へ向かう前に昨夜走ったであろう海沿いの道を、今度は青空の下走った。いい感じの公園に車を停めてもらうと、遠くにぼんやり浮かぶ工場地帯。幻みたい。

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その海のずっと奥、空との境界線もなくなるほど遠く、その辺りを眺めるのが好きだ。何時間でも見ていられるのってのは嘘だけど、何時間でも見ていたい気持ちになる。四方を山に囲まれた海なし県に生まれ育ち、趣味で山も登るけど、やはり私は海が好きだ。水が好きだ。青が好きだ。海鮮が好きだ。キラキラ眩しかったなぁ。

その後、この旅最終目的地の石川直樹さんの写真展へ。
標高8000mを越える山々にまるで手が届きそうな、ふらっと隣の隣の県に来たはずなのに、それはもう遠くの地へ辿り着いちゃったような、距離を飛び越え、はたまた凍てつくような寒さを、ひたいの汗を拭うような蒸し暑さを、肌で感じまくった。

「雨が降ったら“雨が降った”と書く。物悲しい雨が〜とか今にも世界が終わりそうな雨が〜とかではなく。
自分の主観で目の前の世界をねじ曲げるのではなく、出会ったものを体が反応するままに記録する。」
どこかで読んだ石川さんの言葉そのまんまだ。足し算も引き算もないから、淡々としているのに生々しい。
足し算と引き算を繰り返し、答えが一向に出てないこんがらがった私の頭の中を、パチンっと弾いてくれた。すっきり。ほんと行けてよかった。f:id:hanninmaeshufu:20170228215439j:image

全ての装備を知恵に置き換えること (集英社文庫)

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そして、いつまでも続きそうな長いドライブの果て、ただいま。

 

ずいぶん好き勝手に好きなものを詰め込んだ旅だった。付き合ってくれた夫に感謝。
旅はやっぱり好きなものに足が向いてしまうんだね。好きなものだらけの贅沢な旅で、好きなものを再確認した。

次はどこへ行こうかな、どこへ行けるかな、どこへでも行けそうだ。やっぱり私は旅が好きだ。