半人前主婦

帰りの遅い夫を待ちながら、今日も三歩進んで二歩下がる

高血圧とぐりぐりと里帰りと

ひさしぶりに頭が痛い。少し熱もあるみたい。

疲れたかな。

それとなく血圧を測ると、139/88。え?
翌日もやはり134/78、そして頭が痛い。
え?今まで110〜120/70前後だったのに。

ふと「妊娠高血圧症候群」の文字が頭をよぎり、調べてみると主な症状に頭痛とあった。そして、悪化すると母子ともに危険が及ぶ怖い病気とある。闇雲に調べていた曖昧な情報を整理すると、一気に怖くなってきた。
このところ好き勝手していた外食が祟ったか。臨月にかこつけて、好きなもの三昧。
油断していたけど、体は正直だった。実は体重もいいペースで増えている。

そのまま健診の日を迎え、そのまま先生に報告。
今から食事とか気をつけることはあるか?聞くと、

「うーん、それはよくない。でも、あなた赤ちゃんもお腹ももう十分大きく育ったし、今から食事とか薬とかで治療するってより、出しちゃっていいんだよね、もう。」と。

で、別室で内診。
あれ、いつもと違う。
痛い。痛いぞ、こら!何をしとる!
しかも、やたら長い。
声にしないといつまでも続きそうだったので、ついに小さい声で痛いですと言うと、そうだよね、とボソり。
内診を終え、ぽかーんと元の部屋へ戻り、先生の前に座るや否や、
「来週の健診は産まれてなかったら、また1週間後にね」とひと言、あっさり帰された。
へ?産まれてなかったら?って。
冗談なのか本気なのか、あの先生わからないんだよ。呆気にとられて、何も聞けぬまま診察室を後にしていた。

一体何が起きたんだ?
会計を待つ間、なんだかちくちく痛むお腹をさすりながら、
「内診 ぐりぐり 痛い」とスマホに入れると、うわー出てくる出てくる!

通称「内診ぐりぐり」と妊婦さんの間では呼ばれてるらしい。そのまんま!
まさにそのまんまだけど、何をされているか見えないし、そうとしか言いようがない、とにかくぐりぐりされるこの処置をされたに違いない。どうやら子宮内を刺激して陣痛を促すそう。
臨月入った妊婦さんで必要な人には、ぐりぐりしまくって、その晩陣痛きただの、効果なかっただの〜の流れになるらしい。
後で聞いたら「ちょっと魔法かけてもいい?」なんて先生に言われた友だちもいた。なによ、ロマンチックね。

正式名称「卵膜剥離」は、子宮口に指を入れて赤ちゃんを包む卵膜を子宮壁からひき剥がし、子宮収縮を促し、陣痛につなげる方法だそう。どう考えても痛そうでしょ?

あーなんかされちゃったよ、と病院帰り夫に愚痴をこぼすと、
そらいかん!明日にでも実家に帰るのだ!と、今度は夫が騒ぎだした。
こんなはずじゃなかったのに、説得も虚しく、ほんとに帰ることになってしまった。あぁ、忙しい。
あんまり騒ぐから、私まで今晩陣痛来ちゃうんじゃないかと焦ってきた。あぁ、悩ましい。

帰るなり、里帰りの用意をさくさくまとめ、お寿司が食べたい私の望み通り、夕飯はお寿司を食べに出かけた。大袈裟だろう、泣けるほど美味しく、うっとり。何かにつけて最後の晩餐感に酔ってしまうんだった。
その夜はふたりして興奮して、なかなか寝つけなかったのは言うまでもなく。

布団の中で、予定日なんてあくまで予定であって、予定は未定で、ナビの予定到着時刻みたいなもんで、だいたい1時間とかすぐ巻けちゃうし、天気や渋滞や工事や走り方で、時間なんてコロコロ変わるんだしと、しきりに変な例え話をしながら、納得させ合ったというか、とにかく落ち着こう落ち着こうって、落ち着く気なんか更々ないのに。
まだ早いよね、いや、もう会いたいよねって、バカみたいにはしゃいだ。

翌朝目が覚めると、なんかやっぱり平気そうな気がしてきたけど、夫が帰れ帰れとうるさいので、結局実家へ帰って来た。ただいま、ひまだ。
お腹を見るなり、母から「もう忘れちゃったけど、こんなに大きくなるんだっけ」と驚かれた。うん、先輩ママたち何人かにも笑われた、貫禄たっぷりのお腹だ。

そんなわけで、私はここへ来て血圧が急に上がってしまったことと、もう産まれても大丈夫ってことで、このまま高血圧が続いてしまうよりは!と、色々が混ざってこういう流れになってしまった。
だけどね、健診当日と、それから2日間も今日も血圧は正常値に戻ってて、もう頭も痛くないんだはは。
たまたまだったか測り間違いだったか、とにかくぐりぐり痛くされなくてもよかったのかも知れないと思えてきたが、こうなったら実家でおとなしく甘えさせてもらうとするよ。ひまだけど。
しかし、みんな優しいので、また一回り大きくなりそうだ。