半人前主婦

帰りの遅い夫を待ちながら、今日も三歩進んで二歩下がる

流れるような育児の悩み

「手のかからない子」「お母さん思いのいい子だね」と、言われれば嫌な気もしないけど、「ラクそうでいいね」っと言われれば、ムッとくる。
初めての子育てだし、比べる姉妹もいないのでわからないけども、でも、たぶん手のかからない方なんだと、私も思っている。今のところの話だけど。
美容師さんや友だちから、出産後バッサリ切るだろうと断言されていた、洗うのも乾かすのも面倒な胸まですっぽり隠れるロングヘアーを、未だ保持している余裕こそが、それを物語っているのか。
単に美容院に行く時間がないのもあるけど。

そうは言っても、ギャンギャン泣くし、夕方になれば黄昏れて泣くし、しくしくと長期戦の時もあるし、顔を真っ赤にして怒るし、手足バタバタさせて何かを必死に訴えてくるし、私の遊び方をつまらなそうにシラけた顔で見てくるし。いや、睨んでさえいる。すまん。
でも、夜はよく眠るし、昼もよく眠るし、おっぱいはよく飲むし、よく笑う。

確かに、何をしても泣き止まない、泣き声で気が狂いそうだってことは、今までに一度もない。
知り合った月齢の近い子を持つお母さんが、
「これじゃダメだなぁと思ってるんだけど、私の腕だけであやすのは限界で、家と車とを行き来する生活だ。(チャイルドシートに乗せるとすぐ寝るので)」と、しょんぼり嘆いていた時は、同じ新米母として同情した。

今度は逆に「今がラクだと、これからが大変になるよ〜」と、どこからともなく脅される。世間では子育てはそう言う順番らしい。
えーん!わけもなく心配になるじゃないか。

「若い時の苦労は買ってでもしろ」とはよく言ったもんだ。いや、若くはないけども。母歴的には若くて青い。
どこに行けば買えるのだ!それ全部、私が買い占めてやる。

今までだったらラクなことって、ラッキーだった。学校の掃除当番や生理痛、ラクな方がいいだろう。でも、今はなんだか素直に喜べない。どんなに大変で苦労してもいいから、娘には元気で健康に育って欲しい。
いや、好きでラクしているわけではない。別にラクなことが悪いわけでもない。てか、そもそも決してラクなわけではないのだ!
イコールじゃないことくらい、わかっているのに、止まらない思考。

そんな新米母の呟きがブツブツとうるさくならぬよう、新米父は努めて明るく振る舞う。
「寝る子は育つ」「欲求が満たされている証拠だよ」
うん、私もそう思っているんだよ。
それに、何より娘の性格もペースも尊重したい。

最近はこうやって、つい比べてしまうことに罪悪感を感じ、恥じている。ちっさいおとなだなぁと。
物心ついて自分で自分のことを誰かと比べるんだったらいいんだ、あの子より私はこうだとか、あの子のあんなところが羨ましいとか、散々通ってきた道。
おおいにやってくれ!比べて比べて、「比べても仕方ない」といずれ気づくだろう。

けど、娘はもう一人の人間だから。
私が自分の所有物のように、誰かと娘を比べてはいけない。

あれ、「比べても仕方ない」は通り過ぎてしまったのか。
私もまた娘といっしょに、迷子になりながらそこへ歩むのか。いつか辿り着くのかな。まだまだ先は遠い気がしてしまう。

いよいよ面倒くさくなって、「“普通”が一番」って、決まり文句がやってきて、プツンと強引に思考停止。〜の繰り返し。はぁ、疲れるぜ。

だけど、簡単に“普通”と言うけれど、一体全体普通ってなんなんだ?!
そう大人に訴え、自分で考え、結局答えなどまったく見つからなかったはずじゃないか。それなのに、ここへ来て、また“普通”ってのに振り回されるなんて、なんだか情けない話だ。“普通”って雰囲気でしょう。味も匂いもない、空気みたいなやつでしょう。そんなの誰にも測れやしない。
それに自分と言えば、そもそも“普通”ってヤツを散々嫌って生きてきたじゃないか。人と違くなりたいって、なんだかギザギザに尖ってきたじゃないか。棚に上げて、そりゃないぜ。

でも、ヨシタケシンスケさんの育児イラストエッセイにもあったんだ。
ー若い頃、あんなに「人と同じこと」を嫌っていた私たちなのに
こんなに「同じでありたい」と願うことになるなんて。
「みんなと同じであってほしい」
自分のことを棚に上げて、勝手なもんです。ー

見事、その通りだった。
兎にも角にも「ウチもそうだよ」って、言われたい。うちもよく寝るよとか、うちも全然寝てくれないよとか。「いっしょだよ」って。
ラクな時もあれば手がかる時もある、みんなそうなんだもの、きっと。

あと、親のキャパ的に、「コイツ(私)にはこれ以上(育児)は無理だろう」って娘に気を使われてるんじゃないか、なんて考えたりもしてみた。そのうちこんなこと思ってたなんて!と笑えないほど、大変になるかもしれないね。

そう言えば、先日行った市の集団検診。
助産師さんから「きれいなロングヘアーね」と言われ、とっさに「ありがとうございます」なんて返したけど、これって嫌味だったの?って、ふつふつ思い返している。
第一にまったくきれいでもサラサラでもないのだから。切るつもりでいたので、毛先は痛みきったまま、ただ長いだけだもの。これもそのうち手に負えなくなって、ショートヘアにしちゃうかもしれないね。夏になるし。

そのうちそのうち、あれもこれも今そうじゃないだけの流れるような育児の悩みかな。