半人前主婦

帰りの遅い夫を待ちながら、今日も三歩進んで二歩下がる

秋の夜長に

外はすでに充分なほど寒い、もうすぐ冬か。娘が生まれた季節だ。
月明かりが夏よりずっと夜を明るく照らしてくれる。このところ、暗くなるのが早い。夜の時間が長い。秋は大人の季節だなぁ。

娘を寝かしつけた後には、外へ出て、玄関先で深呼吸をする。
月の形を眺め、今夜は涼しいとか寒いとか、どっちでもよさそうなことを肌で確かめ、そっと家に入る。夫が帰って来る前の、束の間の1人の時間の始まりの儀式みたいな。
それから台所で洗い物を済ませ、乾いた洗濯物をたたみ、明日外に干す分を夜のうちに洗い、部屋に干し、ざっと娘のおもちゃを片付ける。
だいたいこの頃には夫が帰って来る。夕飯を食べる夫の前に腰掛け、本を読みながら、仕事の愚痴に適当に相槌を打つ。
今日も1日が終わる。もう終わるのか。ふぅ、疲れたな。

秋の夜長に、毎晩思う。
「出かける前に、もう少し遊べばよかった。」「あの時、抱っこすればよかった。」「布団で眠らせてあげればよかった。」「早くごはんを用意してあげればよかった。」
“もっとこうしておけばよかった”と思わない日はない。そんなことを毎日毎日思いながら、毎日は過ぎていく。
すべて、やりきったと思える日は来るのか?いや、たぶん来ないこともわかっている。

子育ても、親孝行もそうだけど、自分のことじゃないから、仕方ない。相手の幸せは計れない。

今日上手くいったと思えたことでさえ、次の日になれば、昨日ああしておけばよかった、こうしておけばよかったと、あの手この手で、私の頭の中にやってくる。

後悔とはちょっと違う。娘にはもっともっと幸せになってほしいと思ってしまう。私は欲張りだと思う。

そして、私が娘にできることは限られているとも思う。
いずれ、娘は自分の力で幸せになるしかない。私の力では幸せにしてあげられない。
幸せになれる方法も知らない。私は教えてあげられない。

そんなことを夜な夜な思いながら、明日はもっといい日になるといいなぁなんて、具体策も浮かばぬまま、毎晩眠りに就くのさ。

1日は短い。1年もあっという間だ。一生は?まだわからない。でも、短そうだ。
このままこんな風に毎日が続くことを願うような、このままじゃちょっと嫌なような、秋の夜長は、しっぽり物思いにふけるのに、ちょうどいい。夏がすきだった私も少し大人になったのかしら、なんて。
凍てつくような寒さがやってくれば、シャキーン!と気持ちも頭も引き締まるのだろうか。季節が変わる度、気持ちも変化する。毎年、そんなことを思っているような。日本の四季でうっかり迷子になるよ。